モナコでは例年5月にF1のレースが開催されます。このレースは、他のサーキットと一線を画し、コースレイアウトや開催様式はモナコだけの特殊仕様で実施されています。これだけでも、特殊性が見えてきます。華やかさを説明するためには、まず背景としてモナコがどのような国なのかをおさえておきます。モナコ公国はおよそ2平方キロメートルの独立都市国家で、立憲君主制を敷いています。総面積は世界最小クラスながら3万人ほどの総人口のうち、外国籍住民は8割を超えています。所得税が発生しないことから富裕層からの人気が高く、観光地としても有名な国です。地形としては、地中海に面しているものの、島国ではないため隣国へはフェリーやヘリコプターの他、鉄道や高速道路でもアクセスできます。寒暖差が少なく、冬に雪が降って、夏場に猛暑になることもめったにないなど観光面だけでなく居住面でもメリットに欠きません。
F1で走るモナコのモンテネグロ市街地
モナコで行なわれるF1は、世界3大レースの1つとしても名高いレースです。1929年を皮切りに90年近い歴史を積み重ね今日に至ります。通常は、サーキット場専用のコースが使われていますが、モナコではある特徴があります。最大の特徴は、市街地を走る道路が用いられることです。道路から車体が飛び出さないよう、追い抜きができないほどの狭い道幅に加え、F1コースにはここモナコだけにしかないトンネル、真っ直ぐな道がほとんどないコースレイアウトは、走るために高い技術力が要求されます。市街地を走る特性上、F1といえど平均時速は他のレースより低い一方で、ホテルやマンションから間近に観戦できるという楽しみ方ができます。このレースに魅了された人々がレース目当てに開催地のモンテカルロ市街地に集い、20万人を数えるほどの人数が押し寄せます。開催月である5月は予約が取れないほどです。
モナコ王室が優勝者を称える特別な場
優勝者に対し、王室の大公が手ずからトロフィーを授与されるなどモナコ全体を上げての一大イベントとして、F1がその地位を確保していることが伺えます。こうしたことから、モナコでのF1は特別な華やかさを身にまとったレースとして人々に認知されています。F1自体がもともと王室とカジノ経営者の手によって始められたレースであったことも留意しておきたいところです。ロイヤルファミリー総出で行なわれる表彰式では、表彰台が特別仕様になっており、対面する王室関係者の立つ床よりも低くなるように設計されています。他にもシャンパンを開けるエリアに王室への配慮があるなど、独自のルールが存在します。市街地で行なわれることから堅牢なガードレールが張り巡らされる、消防士配備の増員や消化器の増設といった安全面の強化も徹底されてきました。難コースは技量差が生まれやすいことから、腕試しがしたいドライバーからも高い人気を誇ります。